「使う」デザインで目指すこと

  • インタビュー

Documentary Working at RAZONA
アートディレクター・UXデザイナー / 田野直哉

沖縄事業所で採用された一期生の田野直哉さんは、デザインで食べていくと決めたとき、いつかは東京で勝負したいとずっと思っていた。激しい競争の中で高いクオリティを求められるその刺激的なステージで自分の力を試したかったからだ。確かに東京ではレベルの高いデザインに触発されることも多いだろう。田野さんにとって東京に進出することは、必ず手にするべき成長の機会だったといえる。そんな強い思いが通じてか、幸運にも入社わずか一カ月で東京へ転勤が決まった。田野さんはデザイナーとして、一歩を踏みだした。

ラソナで学んだデザインの姿勢……そして未経験の職種へ挑む

沖縄事業所での田野さんの仕事は、コーディング業務が主だった。本格的にデザインの仕事ができるようになったのは東京に転勤になってからのことだ。はじめのころは、アートディレクターが代表の岡村氏で、自分はデザイナーという形でチームが組まれることが多かった。田野さんは岡村氏の背中を見ながらデザインする姿勢を学んだという。

「岡村のデザインには引き算の美学があります。不必要なものは削ぎ落としていくミニマリズムです。そして論理的で機能的であることを重視します。入社したときに制作実績を見せてもらって、説明を聞きながらかっこいいなと思いました。僕もそういうデザインが好きだったので。実際に岡村の仕事を見ていると、要件定義で得ている情報を自分の中で整理して、取ってしまったほうがいいと判断した情報は捨てて提案しています。その思い切りは自信がないとできません。とにかく岡村からは自分の考えを反映させた絵づくりを心がけなさいと言われています」

デザイナーとなって3年が経ったころ、ある案件が田野さんのもとに舞い込んできた。通常なら組織されるチームにはディレクターがひとりアサインされる。ところが、その当時ディレクターは皆多くの案件を抱え手一杯の状況だった。結局岡村氏の判断で田野さんがディレクター業務を兼務することになった。常々ディレクターもやりたいと言ってはいたものの果たして大丈夫か? 田野さんの心には不安がよぎった。

コミュニケーションの大切さを痛感

今までやったことのないディレクターを兼務することに戦々恐々となっていたその案件は、出版コンテンツ制作会社の自社サービスで、読書家が交流するためのSNS。田野さんはデザインとコーディングのフロントエンド部分をディレクションしなければならなかった。

「アートディレクションはしたことがなかったので、デザイナーに指示を出しても自分のアウトプットのイメージが伝わっていなかったり、コーディングでは僕と沖縄のディレクターの間でスケジュールの齟齬があったりでうまくいきませんでした。一番ピンチだったのは、僕のリスクヘッジ不足でコーディングが上がるべき日に上がらずスケジュールがズレていってしまったことです。僕は一人でクライアント先に常駐していたので、いつ上がるのか詰め寄られるわけです。明日にはと苦しい返事をしてたのですが、もうどうしようもなくなって岡村に相談しました。結局なんとかなったのですが、できない可能性があるということをきちんと共有しておくべきでした」

3年間磨いてきたデザイン面ではどうだったのだろうか。

「クライアントのほうは本みたいな質感を出したいということで、イメージの共有を図るために参考サイトや本で確認するのですが、もっと楽しげとか感情的なコメントが返ってくるんですね。楽しげと言っても個人によってイメージするものが違うので、そのすり合わせには少し苦労したかもしれません。僕に具体的なフィードバックを引き出す技術がなかったのでしょう」

はじめてのディレクター・デザイナー兼務の仕事で苦労は多かったが、田野さんにとってはこれを境に自分が変わった忘れられない案件だという。

「ローンチした時には、自分もラソナの看板を背負って仕事ができるようになったと思えました。僕ひとりで常駐していましたから、クライアントからすれば僕がラソナです。そこから逃げることはできないし、何事にも応えていかなければいけない。これが終わってなんだか責任を果たせた気がしたんです。それと、社内の制作進行におけるコミュニケーションの取り方も学びましたから」

職種の垣根を超えてアドバイスを求める

田野さんはアプリの開発も多く手がけている。中でも草野球のハイライトムービーを撮るためのアプリは意欲作だ。今日のプレイムービーを見ながらビールを美味しく飲むアプリというのがコンセプトだ。

「広告代理店からの大まかな概要は、野球の試合を撮影したらそれを連続再生してハイライト動画が作れますというものでした。しかしこれでは体験として弱いと感じました。仕様についても複雑で手間がかかるものでした。もっと打席の撮影にフォーカスしないとアプリとして機能しないということを提案し改善していきました。UXの設計から携わることができて、またCMの撮影に立ち会ったりしてこの仕事は楽しかったです」

チーム編成はプロデューサーとテクニカルディレクター、田野さんの3人。田野さんがアートディレクターにアサインされたのは、UXに強みがあるからだという。

「UXの観点は、ただ情報を流しているだけ、見た目がいいだけではダメで、ユーザーがどういう意図でやってきていて、どういう導線があったら動きやすいかです。最終的に情報の取得や体験にかかった時間も含め満足して帰ってもらえるようにデザインします。結構見えないところのデザインワークが多いんです」

「デジタルデザインは使うもの」と言い切る田野さんは、エンジニアをはじめ、ディレクターや営業など別のポジションのスタッフに助言を求める機会が多いという。

「うちは制作会社で、基本的にはすべて内製です。ですから、各分野に専門の職能を持ったスタッフがいます。僕はここが大事だと思うんですね。動きのデザインをするということは、当然コーディングにも影響することなので、早い段階でエンジニアの意見を聞くことが大事です。デザインしたものが再現できないという場合もあるので、リスクヘッジの意味もあります。どうしてもひとりではムラができるので、僕はエンジニアに限らず別のセクションのスタッフにも気軽に聞いています。みんな嫌な顔しませんから(笑)。こういう環境はいいですよね」

UXを強みに新たな成長を目指す

ロジカルであることをデザインポリシーとしてきたラソナでは、そのポリシーと通底する概念のUXについて議論が交わされている。

「現在岡村と一緒にUXチームを編成して、会社全体でUXに対する知識の向上を図ろうとしています。僕らがUXをどう捉えていて、クライアントにどう説明するのか、またどういうテストをおこなうのか、そのレギュレーションを決めるための会議を毎週やっています。ラソナとしてみんなが共通認識を持って、クライアントから相談を受けたときなどブレないようにと。デザインのクオリティを上げるためのUXの施策、ビジネス面でのUX戦略と2つの軸があるのですが、最終的にはひとつにまとめて、ラソナの考えるUXを打ちだしたいと思っています」

ラソナはUXを軸に新たな成長戦略を描いている。その策定において田野さんが中心メンバーになっていることは実に頼もしい。

ところで、入社6年目となった田野さんだが、ラソナをどんな会社だと思っているのだろうか。

「特徴的なことを言えば、柔軟ではないでしょうか。申し出れば職種が変えられます。実際に僕はデザイナーの仕事を減らしてもらって、ディレクターに比重をおいた仕事のしかたをしていたことがあります。試しながら新しいことに挑戦したい人にはいいでしょうね」

与えられた肩書は名乗り出て変えられる。そこには成果が伴わなければならないが、自由に希望の仕事に挑むことができる、関西出身の代表 岡村氏がよくいうという「やってみなはれ」の精神と言えるだろう。

 


 

インタビューに答えてくれた人

田野直哉 / たの なおや

1988年、沖縄県生まれ。東京工芸大学中退後、専門学校でWebデザインを学び直す。卒業後株式会社ラソナに入社。沖縄事業所を経て、Webデザイナーとしてキャリアをスタート。現在はWebデザインのほか、アプリデザインやアートディレクションにも携わる。

インタビュー / テキスト

和田 知巳 / わだ ともみ

ビジネスエグゼクティブ向け会員誌の編集長を経て、フリーランスに。現在はWebメディアを中心に、ビジネス、IT、ファッション・ライフスタイルなど幅広い分野で企画・執筆・編集を手がける。またライティング活動のかたわら、非常勤講師として外国人留学生に日本語を教えている。

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